
春の暖かな海風が吹き抜ける岩手県陸前高田市。
かつて、SETの「CMSP(Change Maker Study Program)」という1週間のまちづくりプログラムの参加者として、この町を訪れていた関東の大学生3名が、この春、自らの意思で「町民」としての第一歩を踏み出した。
関東の大学生3名が陸前高田市に移住を決めた理由
東日本大震災から10余年が経過し、社会のフェーズは移り変わった。全国的に人口減少が進み、地方創生の現場では「いかに人を呼ぶか」が叫ばれている。
しかし、彼らが移住を決めた理由は、就職の有利さや補助金といった条件ではなく、「お世話になったまちの人たちに恩返しがしたい」「大好きな人たちとこれからも関わり続けたい」という思いからだそう。
社会が効率や成果主義を求める中、彼らを動かしたのは「顔の浮かぶ誰かがいる」という、極めてパーソナルで体温のある強い感情だった。防災やまちづくりを知識として学ぶのではなく、そこにある「関係性」に自らの人生を重ね合わせたのだという。
陸前高田市に移住した大学生3名の思い

東京や埼玉の大学で学んできた彼らの声には、地域を課題解決のフィールドとして扱うのではなく、自らが豊かに生きるための「居場所」として捉える視点がある。
埼玉大学・理学部の河村恭輝さんは、「『一緒に陸前高田で働きたい』と、熱い想いをぶつけてくれた同世代の仲間がいたこと。そして、お世話になった町の方々とこの先もずっと関わり続けたいと心から感じました。何年経っても、『あの時、この決断をしてよかった』と思えるように頑張ります」と語った。
芝浦工業大学・建築学部の山本晃裕さんは、「町の方々が好きになり、『もらった恩を返したい!』と思ったことが一番の理由です。そして何より、陸前高田で暮らす自分自身が『生き生きしているな』と実感できたことが大きかったです。この場所で自分の生き方を見つけ、立派な市民になっていきます」と話す。
専修大学・経営学部の佐久川春駿さんは、「1週間のプログラム期間中だけの関わりでは寂しく、『これからも日常的に関わっていきたい』と強く思ったことが移住の決め手です。プログラムを終えた参加者が『また高田に来たい!』と言ってくれるような、他地域から来た人と陸前高田をつなぐ存在になりたいです」と話している。
地域住民と育んだ「続く関係性」の価値
SETは、「一人ひとりの“やりたい”を“できた”に変える」ことをミッションに掲げている。SETは、若者を地域の「労働力」や「手段」として扱わない。一人ひとりが人生の主役として地域住民と出会い、共に未来を描く。
そこから生まれる「第二のふるさとができた」という心の動きこそが、SETが最も大切にしている価値だという。今回の3名の移住は、一過性のイベントではなく、「続く関係」を地道に育んできたからこそ生まれた一つの希望の兆しといえるだろう。
SETの理事長・三井俊介氏のコメント
SETの理事長・三井俊介氏は、「彼らが初めて陸前高田に来た日の、少し緊張した表情を今でも覚えています。そこから何度も町に足を運び、地域の人と本気でぶつかり合い、笑い合い、別れ際に涙を流しながら、彼らはこの町を『自分の町』に変えていきました。
彼らが『支援者』でも『お客さん』でもなく、『隣人』としてこの町で生きていく決断をしたことを、本当に誇りに思います。これは単なる移住のニュースではなく、日本中の若者が『自分らしく生きる場所』を見つけるための、確かな光です。」とコメントを寄せた。
SETの取り組み
SETは「一人ひとりの“やりたい”を“できた”に変え、日本の未来にGoodなChangeを起こす」をミッションに掲げ、2011年の東日本大震災以降、岩手県を中心とした地域で若者と住民がともに学び合う仕組みをつくってきた。
修学旅行民泊や大学生・社会人向けプログラム、地域コミュニティづくりなどを通じて、若者が地域の日常に関わり、住民とともに学び合う“続く関係”を育んでいる。
2024年度は年間5,000人以上が参加したそう。現在では、岩手県のみならず複数地域で活動を展開しており、若者の成長と地域の活力を同時に生み出しながら、人と地域の関係性そのものを基盤とした、持続可能な地域づくりに取り組んでいる。過去に2度の内閣総理大臣賞を受賞、その他多数の賞を受賞しているという。
関東の大学生3名の人生を変えたまちづくりプログラム「CMSP」や、今後のSETの取り組みにも注目してみては。
SET公式サイト:https://www.nposet.org
SET公式Instagram:https://www.instagram.com/_nposet/?hl=ja
SET公式Podcast/Spotyfiy:https://x.gd/wh4Lo
(yukari)